「十戒 ~第三の掟~」GAUDETE 2021年02月号(本紙第61号)
カテゴリー(記事区分): 教区取組 / 部門 / 推進本部事務局
キーワード(索引語): GAUDETE(推進本部だより),情報の共有化,核なき世界,核兵器禁止条約,祈り・福音の教え・信仰教育
最終更新日:2021年2月9日
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※本稿で述べている見解は、筆者個人のものであり、筆者が属する組織を代表するものではありません。
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十戒(第三のおきて)
あなたは安息日を聖とせよ
「やはり第三のおきても『エジプトの奴隷の家』から民を開放することと関係するものである」
「ファラオは民の福祉を考えたことはない。民は休みもなく働き、生産しなければならなかった。ファラオは民が祭儀をしたり、祭りをする許可も与えなかった。中略 民はファラオを富ませるために働くだけの価値しかもっていなかった。」
「この間違った機構のために民はたたかれ、怠け者のようにそしられた。苦しい涙を流したのである。民の苦しい叫びは、神の耳にまで届き、神は民を解放するために下ってきた。そして、同じ機構に戻らないように、第三のおきてを与えた。中略 第三のおきては、共同体がファラオとは全く反対の新しい考えを持ち、兄弟の労働を食い物にするようなシステムに決して戻らないように与えられた。」
「第三のおきては、一週間に一日は聖なる日として、労働を休まなければならないと定めている。ただユダヤ人ばかりではなく、外人や家畜まで休ませるようにと。どんな仕事も、いかなる理由によってもなされてはならない。休日は労働者が一息つくためであるが、この一息、あるいは、休みは、後で労働者がもっと生産をあげることができる、あるいは、もっと雇用人のために働くことができるためのものではない。労働の目的は金銭を獲得し蓄えることでも、もっと生産し主人やファラオを富ませることを義務づけるものでもない。それこそ『エジプトの奴隷の家』でのことであった。労働はもっと高貴な目的を持っている。世界の創造のとき、六日間働き、七日目に休んだ神をまねなければならないのである。労働を通じて人間は『創造的』になり、神によってはじめられた創造の業を終わらせなければならない。人間の労働の意味は、平和な未来をつくること、すべての人のために主の偉大な安息日を用意することである。」
「このように安息日は、労働の理由を思い出すためである。安息日の祭儀は、人々が将来、労働によって実現しようとすることの前もっての見本の一つであるべきである。祭儀は最終的開放が、ある日、神の力と人間の労働によって実現されるという希望を養わなければならない。」
「そのうえ、安息日を祝うにあたって、共同体は主が昔、民のためにした不思議を思い出さなければならない。エジプトからの解放を思い出すのである。このように、安息日を守ることは共同体をその歩みと戦いの中で力づけてくれる。共同体は、解放者なる神である主によって導かれることを、祝いの喜びの中で感じ、生き経験するのである。」
「イエスの時代に、休養を促進し解放の思い出と希望を増し、人間的労働の意味を知らせるため、そして人間的創造と神への模倣を励ますために、神によって制定された安息日のおきてが、ファラオ的おきて、すなわち、抑圧的おきてになってしまっていた。善と命に仕える代わりに、悪と死に仕えていた。最初の美しさは、全部どこかへ消えてしまっていた。イエスはその生活と教えによって、第三のおきての本当の意味をもう一度新しく教えなおさなければならなかった。」
「今日、週一日の休みが労働者に与えられているが、第三のおきては、いちばん守られていないおきての一つである。抑圧的システムは、休みは労働者がもっと生産をあげ、利益を上げることができるためのものと考えている。その上、多くの労働者は、家族を養うために、日曜日にも働かなければならないほど少ない給料しかもらっていない。ある人たちは、日曜日を郊外に行くために使い、共同体のことなど考えず、労働の意味も、彼らに与えられた使命についても考えない。ある人たちはただ金を稼ぐためだけに働き、また、ある人々は兄弟たちと解放の希望を祝うために日曜日にちょっと立ち止まって見る意思も条件もないほど、労働によって疲れ果てている。その意味でも、われわれは、第三のおきてをもう少し守るのにどうしたらよいかという大きな課題を持っている。」
ここまで十戒の第一から第三のおきてを見てきました。本当は、全文を紹介したいのですが、そういうわけにもいかず、独断で選択しています。第一から第三のおきてを著者は、信仰のおきてとし、解放者である主のみ旨を示すものとしています。第四から第十までを、主のみ旨を具体的に共同体の中で実現していくため、共同体の人々の関係がどうなければならないかを示す、社会の組織のおきてとしています。この二つは神への愛と隣人への愛が離されることのできないように、離すことができません。「解放者なる神への信仰は、一方で最も正しく兄弟的な社会の組織をつくる戦いを必然的に生み出し、この戦いは、ファラオの抑圧的神を否定し、解放者である生きた真の神の顔を知る方向へと民の心を開かせる。」のです。
(平和の使徒推進本部長 野中泉神父)
教区代表者会議について(代議員候補選出期間)
教区代表者会議について、2月は「代議員(候補)」を選出する時期です。先日公表された「教区代表者会議代議員選出基準について」の規定に従い、選任区分宛に白浜司教や野中平和の使徒推進本部長より「教区代表者会議のお願い」等文書が発出されています。
つきましては、小教区、使徒職グループ、カトリック系法人や修道者の方々はよく通知文書をお読みの上、それぞれ選任区分別に「代議員(候補)」を選出していただき、同封の「代議員候補選出届出書」(またはホームページからダウンロード)に必要事項を記入の上、2021年3月8日(2020教区代表者会議準備事務局必着)まで、メール又はFAX(平和の使徒推進本部と同じ)で届け出てください。
不明な点がありましたら、教区代表者会議特設ページを閲覧していただくか、質問専用メールアドレス「request@2020synod-hiroshima-catholic.info」までメールをお願いします。
提出物:「代議員候補選出届」(対象:小教区・各グループ・修道者団体等※)
提出先:2020教区代表者会議準備事務局(平和の使徒推進本部気付)
締切日:2021年3月8日必着
※詳しくは「教区代表者会議代議員選出基準について_20210109版」を参照のこと
本紙の号外記事
連載:核兵器禁止条約採択まで 2.核兵器開発の始まりと使用
本年2021年1月22日に発効した最新の核軍縮条約で人道的観点から核兵器を禁止する(問い直す)「核兵器禁止条約」はどのような背景から条約作成・成立・発効することに至ったのだろうか。
振り返る前に、核兵器大国の一つである米国の大統領に核兵器禁止条約を推進する追い風になりそうなバイデン氏が条約発効直前の1月20日に就任した。いち早く広島市の松井市長と長崎市の田上市長は連名でバイデン新大統領の被爆地訪問を要望する書簡(1)を1月21日に送っている。また、バイデン新大統領は早速ロシアのプーチン大統領と電話会談し、新START(新戦略兵器削減条約)の期限更新について1月26日に原則合意した。米国大統領が交代したことで、核軍縮の進展という期待をいだかせる。なぜなら、バイデン新大統領は2020年の大統領選挙期間中に「米国は『核兵器のない世界』という究極の目標を改めて約束すべき」との声明を発し、オバマ元大統領の「核兵器のない世界」のビジョンを踏襲する意志や新大統領が上院議員時代から核問題に高い関心を持ち、多くの場で発言をおこなってきたからである(2)。
新たな風が吹こうとしているがしかし、条約作成にいたる主な理由は、今も米国をはじめとする核兵器国や核武装国といわれる国々が核兵器を研究開発し、維持していること(3)、その上さらに、NPT(核不拡散条約)体制下における世界の核軍縮が進まないこと、さらにまた、不測の事態ないしは全面核戦争による人類滅亡の可能性(4)が否定できない現状があるからだ。この現状を危惧する非核兵器国のいくつかの国やNGO(非政府組織)などが、今まで核兵器国主導の核軍縮とは別のアプローチで核兵器廃絶を現実的に進めるため、新しい核軍縮の声を1995年頃から上げていった。そして、その成果として2017年の条約成立に結実したのである。
それでは、なぜ核兵器という非人道的な大量破壊兵器が開発されていったのであろうか。人類が核兵器の開発に到達するには、どんな発見、経緯、及び科学的積み重ねがあったのだろうか。
科学における物質の探求は、古来よりおこなわれている。中世のヨーロッパにおける錬金術を経て18世紀に入り、物質を構成する多くの元素が発見されていくことになる。19世紀には、元素を形づくる原子について、実験事実に基づいた科学的な原子論が確立される。その後、19世紀後半から原子の構造を知ることとその原子(物質)内に秘められた原子核エネルギーに関する理論が科学的に確立される。その際には邦人も原子に関する科学的な貢献をしている。
この原子物理学の発展により原子内に秘められた核エネルギーを軍事へ利用する核兵器が開発され、実際に戦争で使わることになる。そして、現在も原子力核エネルギーを軍事分野で利用し続けている。本稿では核兵器開発の歴史と核兵器の現状を簡単に振り返る。
①原子物理学の発展と原子爆弾の開発
19世紀終わりに、放射線や放射能の単位でおなじみのウィリアム・レントゲン(1845-1923)、アンリ・ベクレル(1852-1908)、マリー・キュリー(1867-1934)・ピエール・キュリー(1859-1906)夫妻やアーネスト・ラザフォード(1871-1937)などの物理学者が放射線や放射性物質を発見して原子物理学が芽生える。
20世紀に入り、ジャン・ペラン(1870-1942)、長岡半太郎(1865-1950)やラザフォードが原子模型を発表し、1921年にニールス・ボーア(1885-1962)が「原子構造等に関する研究」を発表し、量子力学的原子構造を理論的に説明する。
1905年に特殊相対性理論により質量とエネルギーが等価であることや1915-16年に時間と空間について理論化した一般相対性理論をアルバート・アインシュタイン(1879-1955)が発表する。1925-27年にジェームズ・チャドウィック(1891-1974)が物質の放射性化に寄与する中性子を発見する。
第二次世界大戦直前の1930年代には核分裂現象が発見され理論化される。1934年、エンリコ・フェルミ(1901-54)は中性子を衝突させることによる物質の放射性化(放射性物質への変質)を実証する。フェルミはその後米国に移住し、マンハッタン計画に参加し、世界初の原子炉CP-1を作製し、核分裂反応の実験に初めて成功する。後にこのCP-1で生産されたプルトニウムが人類初の核実験で使用された核爆発装置「ガジェット」や長崎へ投下された原子爆弾「ファットマン(プルトニウム型原子爆弾)」に使われる。
1935年、原子核内の「強い力」の媒介となる中間子の存在について理論的な予言を湯川秀樹 (1907-81)が発表する。1938年12月にはオットー・ハーン(1879-1968)がウランの核分裂を実証し、1939年1月、リーゼ・マイトナー(1878-1968)が核分裂論として発表する。
1940年代になると、ドイツ、イギリス、フランス、米国、日本やソ連は核分裂を利用した爆弾について、自国の原子核物理科学者などを使って研究・開発を始める。この爆弾開発競争の結果、遺憾ながら米国による原子爆弾の開発成功と実戦投入に至るのである。
②広島・長崎への原爆投下
米国における原子爆弾開発の簡単な経緯は次の通りである。1942年10月に「マンハッタン計画」が始まり、1945年7月16日にニューメキシコ州アラモゴード砂漠で人類史上初の核実験「トリニティ」が実施される。
その後、8月6日に広島に、8月9日に長崎に原子爆弾を投下され、広島で推計14万人(5)、長崎で7万3千人(6)の市民が死亡し、また多くの人々が放射能障害などで75年以上たった現在に至るまで傷病に苦しむこととなる。
原子爆弾という一度に数十万という人を無差別に殺傷し、重い放射能障害である原爆症を一生にわたって負わせる核兵器について、当時の米国政権内にこの兵器が非人道的兵器であるとの認識があったようである。というのは、原爆投下の政策決定に深く関与していた米海軍次官のラルフ・バード (1884-1975)が「人道主義的国家としての米国の地位と米国民の公明正大な態度(フェアプレー)」を理由に原爆投下の2、3日前に日本へ事前警告を行うべきだとする覚書(7)を米国暫定委員会(Interim Committee)のヘンリー・スティムソン(1867-1950)議長(陸軍長官)に提出しているからである。
③原子に秘められたエネルギーについて
20世紀初頭の原子物理学者たちはアインシュタインの特殊相対性理論によって物質にはその内部に巨大な核エネルギーが存在していることを実証する。そのエネルギー量は有名な物理公式E=mc2から導き出される。これは質量(m)に光速(c)の2乗を掛けた数値(右辺)がエネルギー量(E、左辺)と等価であることを示している。光速はこの宇宙で一番早い速度で真空中において秒速約30万kmの速さを誇る。とてつもない大きな数値である。
そこで、この式から導き出されるエネルギー量を考えてみる。例えば、日本の硬貨である1円玉の質量は1gである。この1円玉をすべてエネルギーに変換した場合、通常爆弾に使用されるTNT爆薬換算で約21ktに相当する核出力となる(8)。広島へ投下された原子爆弾リトルボーイの核出力はTNT爆薬換算で約15ktといわれている(約64kgのウラン235のうち約850gが核分裂反応を起こし(9)、約0.7gの質量欠損(10)がおきたといわれている)。たった1gの物質(ここでは1円玉)に、原子爆弾リトルボーイを上回るほどのエネルギーが秘められていることが分かる。
当時の各国軍部、特に米国が戦争を有利に進めるため、この原子力エネルギーに目を付けたことは至極当然だったのだろう。それは、アインシュタインがルーズベルト大統領へ送った手紙に「原子核の分裂連鎖反応が強力な爆弾になり得る」(11)と指摘していたからである。
(文責:平和の使徒推進本部事務局 竹内秀晃)
次月は今月の続きとして今も開発研究・維持されている「核兵器の現状」を確認します。
参考文献等
(1)広島市ホームページ「バイデン米国大統領へ被爆地訪問を呼び掛ける書簡(2021年1月21日)」、https://www.city.hiroshima.lg.jp/site/yoseibun/203799.html
(2)西田充「第3章 米バイデン新政権の核政策」、核兵器禁止条約発効:新たな核軍縮を目指してRECNA Policy Paper,2021-01、長崎大学核兵器廃絶研究センター、https://nagasaki-u.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=26265&item_no=1&page_id=13&block_id=21
(3)共同通信社の報道では、「トランプ米政権が昨年11月、西部ネバダ州の核実験場で、核爆発を伴わない臨界前核実験を行ったことが15日までに、米ロスアラモス国立研究所の文書で明らかになった。同政権下では2019年2月以来で3回目」のように核兵器を維持・近代化するプログラムが続いている、共同通信2021年1月16日付、https://this.kiji.is/723072014813839360?c=39546741839462401
(4)世界終末時計が1947年の公開以来最悪の100秒前を2020年~2021年に指している。新型コロナウイルス感染症をはじめとする疫病や気候変動も関係するが北朝鮮、イランと米国の核問題が大きな要因として人類滅亡までの時間を短くしている、読売新聞2021年1月28日付、https://www.yomiuri.co.jp/world/20210128-OYT1T50258/
(5)広島市ホームページ https://www.city.hiroshima.lg.jp/soshiki/48/9400.html
(6)長崎原爆資料館ホームページ https://nagasakipeace.jp/japanese/atomic/record/scene/1103.html
(7)太田昌克「内包された『対抗的命題』─日米核同盟と核兵器禁止条約」、核兵器禁止条約採択の意義と課題RECNA Policy Paper,2017-08、長崎大学核兵器廃絶研究センター、p.35、https://nagasaki-u.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=2488&item_no=1&page_id=13&block_id=21
(8)質量:0.001kg×光速2乗:90×10^15m/s=90×10^12J(ジュール、熱量)となる、これをTNT爆薬換算するため4.184kJで除すると約21.5kt(核出力)になる
(9)the Atomic Heritage Foundation「Little Boy and Fat Man」、https://www.atomicheritage.org/history/little-boy-and-fat-man
(10)質量欠損とは「素粒子や核子などの基本粒子から構成される複合体の質量はもとの基本粒子の質量和より小さい。この質量差のことをいう。また、核融合反応で解放されるエネルギーは質量欠損に相当する」、公益社団法人日本天文学会ホームページ「天文学辞典(日本天文学会)」、https://astro-dic.jp/mass-defect/
(11)「Letter from Albert Einstein to President Franklin D. Roosevelt, 08/02/1939」、https://web.archive.org/web/20130922132711/http://media.nara.gov/Public_Vaults/00762_.pdf
●参考文献:世界大百科事典、平凡社
「核兵器禁止条約と国家の安全保障に関するアンケート」結果その2
先号では、「核兵器禁止条約を知っている」と答えた人が96%だったことを伝えた。
今号では、問2と問3の集計を見てみる。
問2は、核兵器禁止条約発効(効力発生)日がいつであるかを問うものだ。正確に「2021年1月22日」と回答した人は、23件(約40%)である。残念に感じたのは、発効日を「知らない」と答えた人が、28件(約49%)に上ることだ。日本政府が批准しない条約だったためか、それとも核兵器禁止条約が被爆地を抱える広島教区において自分たちの身近な話題になっていないのか、はたまた新型コロナウイルス感染症の話題がちまたに賑わっているためなのか。どんな理由にせよ、回答した半数は条約発効日を知らなかったという事実から見て、まだまだ核兵器禁止条約が広島教区内に浸透していないことを物語っているのだろう。
問3の核兵器禁止条約で禁止してないことは、「核物質の生成や生産」と「原子力の平和利用」だ。核物質は、医療現場や計量分野などに利用しており、そのため核物質を生産している。そのような利用は原子力の平和利用といわれている。
備考
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文書(ページ)情報
掲載日 | 2021年2月9日 |
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更新日 | 2021年2月9日 |
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編集者 | web管理者(竹内) |
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