「思い起こし、ともに歩み、残すこと。」GAUDETE 2020年02月号(本紙第54号)

カテゴリー(記事区分): 教区取組 / 部門 / 推進本部事務局

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最終更新日:2020年9月14日

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思い起こし、ともに歩み、残すこと。

2月23日、世界平和記念聖堂に女優の高田敏江さんをお招きして、朗読劇「夏の雲は忘れない」からいくつかの場面を再現していただきました。広島、長崎の被爆者とその家族、目撃者が残した手記を高田さんが読まれると、目の前にその場面が広がります。あの「焼き場に立つ少年」を撮影したジョー・オダネルさんのものもありました。涙が止まらなくなるのは、家族を失った悲しみがあちこちに感じられるからではなかったかと思います。心に残った台詞があります。

「ねえお母さん、どうして戦争なんか起きるのでしょうか、止めてほしいなあ、日本にないものはアメリカから送ってもらい、フィリピンにないものは日本から送ってやり、世界が仲良くいかんものかしら。そしたら世界が一つの国家になって、世界国亜細亜州日本町広島村になるね。」

原爆投下の前日に、ある子が星を眺めながらお母さんに残した言葉です。当時の子どもはみんな軍国少年、少女であったのかどうかわかりませんが、やはり戦争を望まない子どもがいたのだなあと思いました。しかも、世界が一つの国になって、お互いがわかち合うことを望んでいます。信者ではないだろうけど、イエスと同じことを夢見ていたのかなあと、びっくりしました。しかし残酷にも、それを夢見た子は、翌日この世から消えてしまいました。残されたお母さんは、その夢が実現する日を見届けたいと書いておられます。子どもの夢を引き継いだお母さんの思いにも胸が痛みます。

おそらく、お母さんも今はこの世を去られたのではないでしょうか。残念ながら、いまだに争いのない、助け合う世界にはなっていません。被爆体験を聴き、このような劇を見ると、すぐ私たちは「戦争はいけない、核兵器はこの世界からなくさなければ」と口では言います。しかし、どれだけ聞いた言葉を自分のこととして受け止めているのでしょうか。何かその実現のために行動しているでしょうか。「思い起こし、ともに歩み、残すこと。」過去の過ちを繰り返さないために、これが大事だと言われた人が誰だったか、覚えていますか。この子とお母さんの夢を引き継がねばならないのは、私たちです。

(平和の使徒推進本部事務局員 シスター古屋敷一葉)

2020年四旬節教皇メッセージ「キリストに代わってお願いします。神と和解させていただきなさい」(二コリント5・20)

教区代表者会議に向けての展望②

2020教区代表者会議の基本的な計画の枠組み(scheme)Ⅰ

この度の2020教区代表者会議(以下、代表者会議)の基本的な計画の枠組みが示されているものの一つは【「2020代表者会議に向けて」(教区代表者会議とその順備について)】です。

2020教区代表者会議「ともに喜びをもって福音を伝える教会へ」特設ページ

1.この文書の作成目的

この文書は、代表者会議の開催にあたり、次のことを目的に作成されました。

  • 「代表者会議」とは何かについて広島教区の信者一人一人に理解してもらうこと。
  • 代表者会議の準備作業へ積極的に関わっていただくこと。
  • 今後開催される代表者会議の基準文書様式となること。
2.この文書の構成

この文書は、私たち教会とその信仰を前提に次のような構成となっていますが、興味のある章のどこからでも読める形式になっています。

  • はじめに
  • 第一章 教区代表者会議の開催理由
  • 第二章 教区代表者会議とは
  • 第三章 教区代表者会議の準備作業
  • おわりに
3.この文書によって示されるもの

この文書によって大きくは次の3点が明確になっています。

  1. この文書には白浜司教様の提示された3つの代表者会議開催理由
    (1)教区のあゆみを振り返る(2010年の教区代表者会議から現在まで)
    (2)「教区創立100周年(2023年)」の迎え方・祝い方を考える
    (3)「教区創立100周年(2023年)」後の教区の優先課題や目標を考える)
    はもちろんですが、現在のわたしたち教会を取り巻く現状も示されています。
  2. 代表者会議の規定
    教区代表者会議がどのような出席者によって構成され、どのように進められ、その結果はどう示されるかを明示しています。
  3. 代表者会議に向けての準備
    代表者会議に出席する代議員だけでなく、各小教区が代表者会議に向けてどのような準備をすればよいのか。取組み方の一つの方法が明示されています。

<次号に続く>

(文責:2020教区代表者会議準備事務局 小松敬)

「核なき世界」を目指して何ができるのか?

1945年から75年、いまだ核兵器は廃絶されていません。昨年の6月現在、地球上にある核弾頭の数は、13,880発(資料元:RECNA核弾頭データ追跡チーム)にのぼります。このうち、約70%の核弾頭を米国とロシアの二国が保有しています。

国際連合において、2017年7月7日に「核兵器の禁止に関する条約(核兵器禁止条約)」を122の国と地域の賛成で採択されました。2020年2月28日現在、条約署名国81、批准国35であり、条約発効まであと15カ国の批准となりました。この批准ペースでいくと本年中に条約が発効されることも夢では無いと考えられます(9. Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons)。

一方、日本国の動きは、どうでしょうか? 条約採択時には、日本代表は出席しておらず(条約交渉冒頭のみ出席、以後不参加)、当然、条約にも署名すらしていません。被爆国でありながらです。外務省は外交白書の中で「日本は、唯一の戦争被爆国として、『核兵器のない世界』の実現に向け、国際社会の取組をリードしていく責務がある。」(4 軍縮・不拡散・原子力の平和的利用)といっているのだけれども。

核保有国である米国では、どうでしょうか? 2020年2月4日に国防総省が、低出力核弾頭「W76-2」(核出力5~7kt、広島型原子爆弾の1/3~1/2)の実戦配備したことを発表しました(Statement on the Fielding of the W76-2 Low-Yield Submarine Launched Ballistic Missile Warhead)。そんな米国ですが、国内の州議会や市議会が連邦政府に対し、核兵器禁止条約の批准を求める決議案を採択しているそうです。カリフォルニア州やロサンゼルス市などその数、42議会です。今年に入りイリノイ州エバンストン市議会が42番目の決議採択(満場一致での採択)議会となりました(Evanston, IL Becomes First City in Midwest to Join Back from the Brink)。

イリノイ州議会のロビン・ゲーブル下院議員は「気候変動と核戦争の危機に相関関係があることを指摘し、核兵器禁止条約への参加は達成可能であり、必要であり、緊急である」と発言しています。また、デイビット・コームズ氏は「エバンストン市民が毎年払っている税金のうち、20億円余りが核兵器関連の支出に使われていること」を指摘しています。ニューヨーク市議会で採択しようとしている決議案には「市職員の年金運用において、核兵器関連企業への投資を避けるように求める」(Divest the pension funds of public employees in NYC from financial institutions that invest in the production of nuclear weapons.)ものも含まれているそうです。

わたしたちには何ができるだろうか? 2015年に教皇フランシスコは、回勅「ラウダート・シ」を公布されました。環境問題を取り上げた教会文書です。今の世界は、いきすぎた豊かさを求める結果、資源の争奪、そのための軍備拡大、その結果、核兵器の開発維持、そしてまた資源の争奪を繰り返しています。教皇は2020年の「世界平和の日」メッセージで「わたしたちが自らの行動規範を誤って解釈し、自然の濫用を正当化したり、被造界に対して横暴に振る舞ったり、戦争や不正や暴力行為に手を染めたりすることがあったのであれば、わたしたち信仰者が認めるべきは、それによってわたしたちは、自分たちが守り保つよう招かれた知恵の宝に不忠実だったということです」と指摘しています。

また、教皇はこうも指摘しています「平和の道のりを切り開いて進むことは、ますます複雑な挑戦となっています。個人、共同体、国家間の関係に付随する利害が多様で相反しているからです。何よりもまず道徳心と、個人の意思と政治的意思に働きかけなければなりません。平和はまさに、人間の心の奥底から現れます。そして、政治的意思は、つねに新たにされなければなりません。それにより、人々と共同体を和解させ一つにする、新たな道が開かれるのです。」(同)と。

皆さん、自分が住んでいる県市町議会が、日本政府に対して「核兵器禁止条約に批准するよう求めること」を決議していますか? 私たちが支払っている税金のどの位が防衛費に使われているか知っていますか? 私たちは、知らず知らずのうちに間接的に軍備拡大、核兵器技術開発に加担しているのかもしれません。先に紹介した米国内の議会での決議案採択には、カトリック教会のネットワークが大きな影響力を発揮しているそうです。

最後に、聖ヨハネ・パウロ二世教皇のことばを心に留めて今後を歩んでいきたいと思います。「神よ、わたしの声を聞いてください。それは、個人の間、または国家の間でなされた、すべての戦争と暴力の犠牲者たちの声だからです。神よ、わたしの声を聞いてください。それは人々が武器と戦争に信頼をおくとき、いの一番に犠牲者として苦しみ、また苦しむであろうすべての子供たちの声だからです」(平和アピール)。神とすべての人々に声が届きますように。

(平和の使徒推進本部事務局員 竹内秀晃)

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掲載日2020年3月4日
更新日2020年9月14日
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