核兵器廃絶に向けて勇気ある一歩を

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最終更新日:2013年6月28日

2010年2月26日に「核兵器廃絶に向けて勇気ある一歩を ~被爆地ヒロシマ・ナガサキの司教からの要請~」が高見大司教(長崎大司教区)及び三末司教(広島司教区)連名で文書が発表されました。


2010年2月26日

米国大統領と日本政府及び各国の指導者の皆様

カトリック長崎大司教区

大司教 ヨセフ高見三明

カトリック広島教区

司教 ヨゼフ三末篤實

~被爆地ヒロシマ・ナガサキの司教からの要請~

核兵器廃絶に向けて勇気ある一歩を

わたしたちは、世界で唯一の被爆国である日本のカトリック教会の広島、長崎における司教として、またわたしたちの最高指導者であるローマ教皇の意向に合わせて、米国大統領と日本政府及び世界の国の指導者に核兵器廃絶に向けて最大限の努力を傾注してくださるよう要請します。

先の世界大戦末期、一瞬にして十数万人に及ぶ人々の命を奪い、今に至るまで被爆犠牲者を肉体的にも精神的にも苦しめ続けている恐るべき核兵器は、その数千倍の殺傷能力をもつ水爆の実験後、実戦向けの改良を経てさまざまな種類のものが多数生産されています。いかに瞬時かつ大量に人を殺せるか、またいかに兵器生産で利益を上げるかという目的のために、人類の科学技術の進歩が悪用されることは何と悲しく愚かなことでしょう。この愚かさは、原子爆弾投下という行為に凝縮されて現れましたが、その罪深さの責任は直接原爆を投下した米国のみならず、日本を含む国々が歴史を通じて戦争をし続けてきたことにあります。その意味で、わたしたち自身の反省も込めながら未来への共通の目的、すなわち核兵器廃絶と戦争のない世界の実現に向けてともに歩みたいと願うものです。

すでに世界の核保有総数が2万発以上もあるという現実の中では、単に核のない世界の実現という理想を掲げるだけではなく、これをどのように確実に削減していくかがとても重要なことになります。このような努力の積み重ねがなければ核兵器廃絶は決して実現しないからです。その意味で今年の4月に行われる核安全保障サミット、そして5月に行われる予定の核拡散防止条約(NPT)再検討会議において、各国の指導者たちがそれぞれの利害を越えて、核兵器廃絶に向けて確実な一歩を踏み出す合意を得ることを心から願うものです。

米国大統領にお願いします

来る3月に行われる貴国の核政策の指針、「核戦略体制の見直し(NPR)」において勇気ある決断をし、指導力を発揮するようお願いします。すなわち、少なくとも核兵器廃絶に向けた最初のステップとして核兵器保有の目的を他者による核兵器使用の抑止のみに限定する、いわゆる「唯一の目的(Sole Purpose)」に決定していただきたいのです。もしこの決定がなされれば、それに伴って核兵器の削減が行われ、NPT にも大きな影響を与えることができます。

日本政府にお願いします

すでに多くの人たちが指摘してきたように、米国においてこのような核兵器の役割縮小の議論が起こっても、日本政府は米国の核の傘の下での安全保障政策を堅持し続けてきたために、核兵器廃絶はおろかその削減にも極めて消極的であったと思われます。ところが、去る1 月29 日、岡田外相は基本的な外交政策に関する演説で、核兵器廃絶への一歩として米国の「唯一の目的」に注目し、支持すると明言されました。このことは一定の前進として評価できます。しかし、この表明は米国の核兵器削減政策に対する賛同にとどまっており、今後は日本自らがその廃絶に向かって何をするのかを表明し、それを実行していかなければならないことは言うまでもありません。

世界の国の指導者にお願いします

核兵器廃絶の目標は、自国が核保有国であるか否かに関わらず、世界の国々が共有する課題であることは明らかです。核兵器の生産と管理のためには莫大な費用を必要とします。核の抑止力は核兵器廃絶への第一歩ではありますが、戦争の原因を増大させるだけであり、真の平和をもたらすことはできません。また仮にどこかの国やある集団がこれらを使用するとすれば、その影響は地球規模のものとなるでしょう。すべての人が望むのは、兵器に囲まれた争いの世界で生きることではなく、愛と信頼のうちに互いに助け合い、誰もが人間らしく生きることができる世界の実現です。戦争を起こす人間は、同時に戦争を起こさない決断もできますし、またその役割が期待されてもいます。国の指導者として選ばれた皆さまは、平和のために大きな貢献ができる立場におられるのです。今一度、核兵器廃絶と戦争のない世界の実現に向けて勇気ある一歩を踏み出してくださるようお願いいたします。

備考

  • 2013年3月16日 旧ホームページより転載


 

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掲載日2013年3月16日
更新日2013年6月28日
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編集者web管理者(竹内)
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